「ねぇ、ちょっとこっち向いて。」
ただ、その顔が見たいから。
気づかずに人は通り過ぎていく。
始まりと終わりがあるにしても、
命とは、どこまで行っても自分だけのもの。
他人の生き死には、自分の生死の間にだけ起こる事情。
それでも誰かの息衝きを感じて生きているのなら。
時はいつか全てを消しうるのか。
それとも…
「ねぇ、ちょっとこっち向いて。」
ただ、その顔が見たいから。
気づかずに人は通り過ぎていく。
始まりと終わりがあるにしても、
命とは、どこまで行っても自分だけのもの。
他人の生き死には、自分の生死の間にだけ起こる事情。
それでも誰かの息衝きを感じて生きているのなら。
時はいつか全てを消しうるのか。
それとも…
時の流れは早くて、
気がつけばいつも、何か忘れたものを残したまま過ぎ去って行く。
両手に荷物を抱えた人は、常に何かを忘れて行く。
守るものがあることは、それだけ失うという事。
それに耐えうる覚悟がある者だけに、「それ」は与えられる。
今を生きるということは、何も持たない事。
ただその瞬間に、対峙する事。
澄み切った風が爽やかに吹く、
ネルソンベイの橋の上。
夜空にはミルキーウェイが光を放つ。
今、君の手を握って。君の顔を見つめて。
君の瞳が眩しいけど、もし僕が
真っ直ぐ見つめることが出来たなら。
僕はもう何もいらない。
きっとこんな気持ちは。
だから。
勇気を出して覗き込む、
水に映りし月の光。
その鏡の向こうに映る姿こそ。