「お前くらいの浅はかな発想は誰にでも出来る」
20代の若かった僕には、それが怒り、悔しさに残っていた。
あれから20数年。
父は衰え、僕は迷いと葛藤、失敗と反省の体験の日々の繰り返し。
その出会い、縁運の殆どが、父をきっかけとしたものだった。
いつからか、父への感情は、理解と受容、
感謝と謝罪へと変わっていた。
旅立つ直前。小さくなり、語ることさえ苦しくなった父。
父の僕に対する問いの答えに対して、一呼吸置いたあと。
「・・・カズオも成長したなぁ。」
横になり、天井を見ながら小さくなった父はそう呟いた。
空を粉雪が舞い、凍てつく、けれどもどこか暖かい風が頬を撫でる。
空の色が、心を染め、心の色がまた空を彩る。
南西に沈む太陽の先に、
悟りを志した父の次の旅の物語に。
僕の引き継いだ物語はこれからが始まりだ。